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アメリカの音楽教育に見る「自由」と「ルール」の共存― ギルド試験とACM指導者の役割 ―




アメリカは「自由」をとても大切にしている国です。


言いたいことを言う自由、信じたいものを信じる自由、集まって話し合う自由などが、憲法によってしっかり守られています。独立宣言にも「すべての人は自由で平等に生まれた」とあるように、個人の考えや生き方が尊重される社会です。


しかしその一方で、アメリカでは「自由」は何でも勝手にやっていいという意味ではありません。自分の自由を守るためには、他の人の自由も尊重しなければならない。だからこそ、社会にはルールや法律があって、それを守ることが大前提になっています。


この考え方は教育の中にも根付いていて、アメリカの学校では、生徒が自由に意見を言ったり、自分らしく表現したりすることが大切にされています。


しかし同時に、他の人の意見をちゃんと聞いたり、ルールを守ったりすることも求められます。


そして、そうした環境の中で先生に求められるのは、生徒一人ひとりの「意思」や「意見」をちゃんと受け止めて、自由と責任のバランスをうまく教えていくことなんです。先生自身も、ただ教えるだけじゃなくて、自分の考えや信念を持って教育に関わっていくことが大事になります。


音楽教育の現場でもそれは同じで、自由な表現や創造性はとても大切にされます。でも、基礎的な技術や音楽理論、協調性といった「守るべきルール」も、しっかりと教えられます。中でも米国ギルド・ピアノ検定試験はその象徴です。


アメリカは、普段の生活の中では自由に選べることや、自分らしくいられる場面がたくさんある国ですが、ギルド試験に関しては、少しちがっていて、とても丁寧に決められた参加規定(ルール)があります。


たとえば、ギルド試験では、演奏する曲の数や、暗譜ができているかどうか、視奏(初見演奏)、そして移調といった内容が、すべて全米で統一された基準にもとづいて行われます。そして、ひとつひとつにしっかりとしたルールがありますが、その分、生徒さんの努力や成長が丁寧に評価される仕組みになっています。


ギルド試験の中でとくに感じられる、アメリカらしさ――それは「自由」です。課題曲が決められているわけではなく、生徒さんや先生が選んだ曲を使って受験することができます。演奏する曲のジャンルも自由、そして演奏時間にも決まった制限はありません。


このように、ギルド試験は一人ひとりの個性や選択を大切にし、その人らしい音楽が尊重される、まさに“自由の国・アメリカ”らしい試験なのです。


この「自由」がどのようにして保たれているのかというと、それはギルド試験を運営しているアメリカのピアノ指導者団体が、特定の出版社や楽器店などと提携せず、常に中立な立場を大切にしているからです。


また、営利目的や商業的な活動を行わず、純粋に教育的な立場から生徒さんの成長を支えていることも、この試験の大きな特徴です。


そのため、どの教材を使うか、どんな曲を選ぶかは、すべて先生と生徒さんの自由にゆだねられていて、一人ひとりに合った音楽の道を歩むことができるようになっています。


このときにとても大切なのが、指導者が日頃から生徒さんの様子や成長をどれだけよく見ているか、という「観察力」です。ただ決められた課題をこなすことよりも、「この子の今の演奏には、どんな曲がふさわしいか」「どんな表現がその子らしいか」と、ひとりひとりに合った指導をしていくことが求められます。


そして指導者は、「この課題を全部こなしたら、この子は○級に合格できる」というふうに逆算するのではなく、「この子の今の演奏力や音楽性は○級くらいだから、この曲はこんなふうに表現するのがふさわしい」と、その子自身の力を見ながら指導していくことが大切になります。


こうしてお話しすると、少しむずかしく感じるかもしれません。しかし、ギルド試験には「自由」な部分もちゃんと残されています。


たとえば、生徒さん自身が好きな曲を選んだり、自分に合った目標を立てたりすることができるんです。だからこそ、一人ひとりが無理なく、自分のペースで挑戦できる仕組みになっています。


そしてそんな中で、ACM米国公認指導者の役割はとても大きくて大切です。


生徒さんの個性や成長にそっと寄り添いながら、試験に向けてどんな準備が必要か、どこをがんばればもっと伸びるのかをやさしく伝えてあげる。そして、試験のルールや厳しさもきちんと説明しながら、生徒さんが安心して前に進めるように、丁寧に導いていくことが求められます。


こうして見ると、アメリカの「自由」と「ルール」はバラバラではなくて、どちらも必要で、お互いを支え合っている関係なんです。教育や音楽、ギルド試験のような場面でも、それははっきりと表れていて、先生はその橋渡しとしてとても大切な存在だと言えると思います⭐︎


米国ピアノ指導者団体

ACM日本支部


 
 
 

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