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ギルド試験の「ちょっとわかりにくいな」から始まる音楽の旅――問いかけから始まる、対話とつながりの時間


アメリカのピアノ検定「米国ギルド・ピアノ検定試験」は、英語で行われる審査、自由度の高い選曲、そして一人ひとりに合わせた個別評価など、一般的なピアノの試験とは少し異なる特徴を持っています。

 

そのため、初めて参加される方にとっては、少し「わかりにくい」と感じられることがあるかもしれません。

 

また、よく見られるような「この曲が弾けたら、この級」といった明確な基準とは異なり、ギルド試験では「選ばれた曲に対して、どのような力が身についているか」を評価するスタイルです。—— “わかりやすさ”よりも「自由」と「柔軟さ」を大切にする、アメリカらしい価値観が表れています。

 

ギルド試験においては、受験レベルや楽曲の難易度の判断を、米国本部が一律に定めるのではなく、生徒さんのことを最もよくご存じの指導者の知識とご経験に委ねられています。

 

たとえば、海外で「ピアノはどのくらい弾けるの?」と聞かれた際に「ソナチネのレベルが終わったところです」と答えても、うまく伝わらないことがあります。


というのも「ソナチネ」はそもそも“作曲形式”の名称であり、技術的な到達度を示す「レベル」や「級」とは異なるため、国や地域によって捉え方や理解の仕方が大きく異なるのです。

 

こうした背景をふまえると、ギルド試験は「アメリカで1929年から続いているピアノの検定試験」であり、日本にとっては「海外の音楽評価制度」にあたります。

 

そのため、この試験に初めて生徒さんと一緒に参加される先生の中には、「少し不便かもしれない」「仕組みがわかりにくいな」と感じられることがあるかもしれません。


けれども実は、ACM米国本部では、これまでにもそのようなご質問やご不安の声を、長年にわたってたくさん受けとめてまいりました。そして、その中で一貫して大切にされてきた考え方があります。

 

こうした戸惑いは、日本の先生に限ったことではなく、アメリカ国外でご指導されている多くの先生が、共通して感じていらっしゃるものでもあります。どうぞ、ご心配をひとりで抱え込まず、いつでもお気軽にご相談ください。

 

「わかりにくさ」の中には、学びの芽がそっと隠れています。ふとした疑問が新しい気づきにつながり、「難しい」と感じていたことが、やがて「使いやすい」ものへと変わっていくこともあるのです。

 

教育における本質的な価値——「問いを持つこと」「対話すること」そして「人とつながること」ギルド試験には、そうした学びの原点が、自然なかたちで息づいています。

 

少し前置きが長くなってしまいましたが、ここからは「不便さ」の中にある気づきの種、そしてそこから生まれるコミュニケーションの大切さに、そっと目を向けてみたいと思います。

 

ーーー


実際、ギルド試験はアメリカ国内でも特別な存在で、受け方や取り入れ方に“決まりきった正解”はありません。

 

だからこそ、最初のうちは、指導される先生ご自身が少しずつ好奇心を持って学び、工夫を重ねながら、生徒さん一人ひとりに合わせて取り入れていくことで——「不便だと思っていたけれど、実はとても便利だった」「わかりにくいと感じていたけれど、本当はとてもシンプルだった」——そんな気づきが、少しずつ積み重なっていきます。こうした変化は、アメリカ国内でも多くの先生方が経験されています。

 

そして「少し不便かも」と感じたときにこそ、一歩踏み出して「わからないことは聞いてみる」という行動が、とても大切なことなのかもしれません。

 

これはギルド試験に限らず、日常のさまざまな場面にも通じることです。「まぁいいか」と流さず、そっと声にしてみる——その小さな一歩が、思いがけない気づきややさしいつながりを生むこともあります。

 

たとえば試験に向けて「どんな曲を選べばいいの?」「審査員はどこを見ているの?」といった疑問が生まれるたびに、生徒さん、先生、保護者の方の間で自然と対話が生まれます。

 

わからないことがあるからこそ、人と向き合い、気持ちを言葉にして伝える大切さを知ることができます。そして、言葉や文化の壁を越えて心が通じ合ったとき、その体験は子どもたちにとって、何ものにも代えがたい大切な記憶となって心に残っていくことでしょう。

 

何ごともスムーズに進むことが求められがちな今の時代だからこそ、「ちょっとわかりにくいな」と感じたときにこそ、立ち止まって誰かと話してみることが大切なのかもしれません。そんな対話の積み重ねの中に、気づきや学びの種が静かに育っていくのだと思います。

 

わからないことがあるからこそ、人と向き合い、自分の気持ちを言葉にして伝える力が育まれます。そして、言葉や文化の違いを超えて心が通じたとき、その経験はきっと、子どもたちにとって一生の宝物になることでしょう。

 

ACM日本支部では、「わかりにくい」と感じる場面があるとわかっているからこそ、指導者の皆さまと一緒に考え、一緒に育っていけるような環境と、あたたかい雰囲気づくりを大切にしています。いつでも、ご不明なことがありましたらお気軽にご連絡ください。

 

本日は、「不便さ」と「コミュニケーション」に込められた大切な意味について、見つめてみました。そこには、教育における本質的な価値——「問いを持つこと」「対話すること」そして「人とつながること」が、静かに息づいています⭐︎

 
 
 

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