揺れ動く時代と、変わらない音── 学びを育てるギルド試験の時間
- ACM日本支部
- 4月8日
- 読了時間: 5分

米国ピアノ指導者団体ACM日本支部です。
2025年4月6日(日曜日)から、米国ギルド・ピアノ検定試験の日本開催の申し込みが始まりました。(申し込みの締切は2025年5月11日(日曜日)の午前8時(日本時間)を予定しています)
この時期になると、それぞれのペースで目標に向かってがんばる子どもたちの姿に、そっと背中を押されるような気持ちになります。小さな一歩一歩を見守りながら、私たち大人もあらためて「学ぶこと」の意味や、音楽が与えてくれる成長の力を感じる季節です。
一方で、アメリカの大統領が連日ニュースを賑わせ、世界中がどこか落ち着かない空気に包まれている今・・・そんな時だからこそ、ふと立ち止まって考えたくなることがあります。
なぜなら、今の騒ぎのしわ寄せは、きっとこれからを生きていく子どもたちの未来にも、どこかで影を落とすかもしれない——そんな思いがよぎるからです。
例えば、関税が上がれば、心を育てるピアノも「モノ」として真っ先に影響を受けます。その影響は、やがて子どもたちの「学びのチャンス」にもつながっていくかもしれません。だからこそ今、心に留めたいのが、「知識・経験・教育——音楽がくれる一生の財産」ということ。
子どもたちが日々の練習を通して少しずつ積み重ねているものには、目には見えなくても、確かな意味と価値があるのだと思います。そして今日は、この機会に、ピアノを学ぶということの意味や、そこから育まれていく心の成長について、静かに見つめ直してみたいと思います。
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ピアノのレッスンは、単に楽器の演奏技術を学ぶだけの時間ではありません。そこには、音楽という芸術を通して人生を豊かにする、かけがえのない学びが詰まっています。
日々のレッスンを通して子どもたちは音楽的な知識を少しずつ積み重ね、 その知識は、試験や発表会だけのためのものではなく、何年たっても心に残り続ける一生の財産です。
少し大袈裟に聞こえるかもしれませんが、長年音楽に携わっていると、そう感じずにはいられない瞬間に巡り合います。 ピアノを通して育まれているのは、ただのスキルではなく、人生を支えてくれる目に見えない力も含まれていたりします。
そして、毎日の練習、日々のレッスン・・・思うように弾けなかった日、何度も繰り返したフレーズ、発表会や試験での緊張と達成感——こうした一つひとつの積み重ねが、子どもたちにとっての経験になります。
音楽は、努力がすぐに形になりにくい学びでもありますが、それでもあきらめずに続ける姿勢や、長い時間をかけて何かを達成する喜びは、他のどんな学びでも得がたいものです。
うまくいかない日があっても、昨日より今日の方が調子が良いことに気がついたり、自分の手で一曲を最後まで弾ききれたときの達成感は、子どもたちの心に確かな自信となって積み重なっていきます。そうした経験は、ピアノの前だけでなく、これからの人生のさまざまな場面で、静かに、でも力強く子どもたちを支えてくれるのです。
さらに、音楽を通じて育まれる教育とは「こう弾きなさい」と教えられたことをその通りにこなすだけではありません。
音を聴き、感じ、考え、自分なりの表現を模索していく中で、子どもたちは自分自身の心と向き合い、他者の想いを想像し、より深く豊かな感性を身につけていきます。ピアノの前で過ごす時間は、思いやりや集中力、自己肯定感といった、人生を生きていく上で大切な人間性を育てる時間でもあると考えます。
知識、経験、教育——この3つは、お金では買えない、そして値段のつけられないほどかけがえのないものです。物として形に残るものではないかもしれませんが、これらには共通して、一度手に入れたら、どんな状況でも奪われることのない、自分だけの宝物になる力があります。成績や肩書きがなくても、心の中にしっかりと根づいていく、目に見えない「生きる力」なのです。
子どもの成長は、目には見えなくても、日々確かに形づくられていくもの、そしてその成長は子ども自身の努力だけでなく、温かく見守るご家族のサポート、信頼できる先生との出会い、そして安心して学べる環境によって大きく育まれていきます。音楽を続けていく中で築かれる関係性や周囲の支えは、子どもたちの心に深く根づき、豊かな人間力を育てていくのです。
ピアノ教育は、「音楽が上手になること」だけを目指すものではありません。
その過程で出会う感動や葛藤、小さな成長のひとつひとつが、子どもたちの心に豊かさをもたらし、やがてそれが、自分を信じる力となって、未来を生きる支えとなっていきます。
音楽とともに育まれた知識と経験と教育は、誰にも奪うことのできない、かけがえのない財産として、子どもたちの心の中に残り続けると願っています。
今年もギルド試験のお申し込みの季節がやってきました。
指導に携わる立場として、子どもたちが目標に向かって努力する姿は、今、この学びの時間がどれほど大切かを改めて教えてくれます。
そして関税をはじめ、世界の情勢が音楽教育にも影響を与える今だからこそ、音楽が育てる「知識・経験・教育」という土台の価値を、より深く感じています。
目に見えないけれど確かなこの力が、子どもたちの未来を支えるものになりますように。そして、音楽とともに歩む日々が、これからも豊かなものでありますように。その小さな一歩を、これからも大切に見守り、支えていきたいと思います⭐︎
米国ピアノ指導者団体
ACM日本支部
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