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見える力と、見えない力 ― 芸術教育とアメリカのギルド試験に見る“評価”の意義

更新日:4月8日




芸術というのは、人の気持ちや思い、美しさを音や形にして自由に表すものです。


音楽、絵、ダンスなど、表現の形はさまざまですが、「こうしなければいけない」という決まりがないのが芸術の魅力です。聴く人や見る人によって感じ方が変わり、どの感じ方も間違いではないという、ひとりひとりの個性が大切にされる世界です。


ピアノを学ぶ子どもたちも、少しずつ音の美しさにふれながら、自分の気持ちを音にのせて表現する楽しさを知っていきます。


ただ、音楽の力は見た目には分かりにくいもの。だからこそ、「どんな力がついてきたのか」「どこをこれから伸ばせるか」を知る手がかりとして、“採点”や“評価”といった仕組みが役に立ちます。


その一つが、米国ピアノ指導者団体ACMが主催する「米国ギルド・ピアノ検定試験」です。ギルド試験は、アメリカだけでなく世界中のピアノ学習者に広く親しまれている検定試験で、アメリカ国内を中心に高い信頼を得ている国際的な評価制度のひとつです。


受験者の年齢やレベルに応じて内容を調整できるきめ細やかな仕組みが整っているため、初心者の子どもでも安心して取り組むことができます。こうした柔軟できめ細やかな対応も、この試験が90年以上にわたって続いてきた大きな理由のひとつです。


ギルド試験では、ただ音を間違えずに弾けるかどうかだけでなく、「音楽をどう表現しているか」「どんなふうに感じて弾いているか」といった音楽性や表現力もしっかり見てくれます。また、暗譜での演奏、楽譜を読む力(読譜)、音楽理論の理解など、音楽を学ぶうえで大切な力を幅広く評価する、総合的な試験となっています。


ギルド試験の評価はとても丁寧で、ただ点数をつけるだけではありません。演奏のよかったところや、その子ならではの魅力、そしてこれから伸ばしていける部分を、具体的な言葉で伝えてくれる「講評(コメント)」があるのも、大きな特長です。


この講評スタイルには、アメリカの教育に根づいている「褒めて伸ばす」考え方が生かされています。できたことをしっかり認め、良いところを言葉にして伝えることで、子どもは「自分はちゃんと成長しているんだ」と実感し、自信ややる気につながっていきます。


ここで大切なのは、「褒めて伸ばす」ことは、決して“甘やかす”ことではないという点です。ただ何でも「上手だったね」と言うのではなく、演奏のどの部分がよかったか、どこをもう少し頑張ればもっとよくなるかを、愛情を持って、的確に伝えていくのがギルド試験の講評です。これは、子どもを一人の音楽家として尊重し、可能性を信じているからこそできる関わり方でもあります。


審査員の先生方は、一人ひとりの演奏をしっかり聴いて、その子に合った視点で向き合い、成長を後押しするコメントを届けてくれます。だから、試験を受けたあとには、「もっと音楽が好きになった」「次はこんなことに挑戦してみたい」と思えるような、前向きであたたかな体験が残ります。


また、ギルド試験の評価は国際的にも高く評価されており、その実績はアメリカ国内にとどまらず、世界中の教育機関や音楽指導者の間でも広く認知されています。日本国内でも年々受験者が増えており、アメリカ国外であっても信頼性の高いピアノ検定のひとつとして位置づけられています。


この試験の記録は、将来的に海外の音楽学校や総合大学への留学を考えている場合や、国際的な音楽活動を目指す際の実績として活用できることもあります。


ギルド試験では、受験者のレベルや演奏内容に応じて詳細な成績表や証明書が発行されるため、それが自分の音楽スキルを証明する“ポートフォリオ”のような役割を果たすこともあります。


こうした背景から、ギルド試験は「今の力を知るため」だけでなく、「将来につながる経験」としても価値がある試験です。


さらに、子どもたち自身にとっても、「自分の音楽が世界とつながっている」「世界中の人が同じ試験に取り組んでいる」と実感できることは、大きな励みになります。音楽が国や言語を越えて広がっていく感覚を、子どもたち自身が体験できるのは、ギルド試験ならではの魅力のひとつです。


とはいえ、大切なのは「点数」だけではありません。試験のために練習する中で、集中力がついたり、努力する楽しさを知ったり、人前で弾く経験を積んだりすることこそが、子どもたちの大きな成長になります。


そして、先生や保護者の方が、結果だけでなく過程をしっかり見守り、「がんばったね」「表情がとっても豊かだったね」と声をかけてあげることで、子どもたちはもっと音楽を好きになっていきます。


芸術に評価を取り入れることは、子どもたちの学びや成長を支えるための有効な手段のひとつです。しかし、芸術の本質は数字では表しきれません。ギルド試験のような評価の場を通して、「音楽の楽しさ」や「表現するよろこび」に気づき、内面から音楽とつながっていく経験こそが、長く音楽を続けていくための原動力となっていきます⭐︎


米国ピアノ指導者団体

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