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音楽で広がる選択肢:日本とアメリカの教育の違い


日本でもアメリカでも、ピアノの先生は、子どもたちの成長をそばで見守る大切な存在です。ピアノのレッスンは、ただ技術を身につけるだけでなく、子どもたちの創造力や自己表現を育む、かけがえのない時間でもあります。


アメリカでの子育ては、日本とは違う価値観や教育環境の中で、多くの学びがあります。

特に音楽・ピアノ教育の分野では、多様な文化が共存するアメリカならではの方法が生まれ、広がってきました。いろいろな視点から学べることがたくさんあり、私たちも日々学んでいます。


こうした記事が、日本の保護者の方や先生方にとって、子どもたちの可能性を広げたり、国際的な経験や将来の選択肢を考えるきっかけになれば嬉しいです。そして、ピアノ指導者団体としてお子さんの成長のお手伝いが少しでもできたら嬉しいです。


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ピアノのレッスンといえば、先生が生徒に「この曲を弾きましょう」と選ぶのが一般的だと思われるかもしれません。しかし、レッスンの進め方にはいろいろな方法があり、アメリカでは少し違ったアプローチが取られていることもあります。


アメリカでは、幼いころから「自分で考え、決める力」を育てることがとても大切にされており、ピアノのレッスンでも「何を学びたいか?」を生徒自身が選べるスタイルが多く見られます。


例えば、クラシックだけでなく、ジャズやポップス、即興演奏など、さまざまなジャンルに挑戦する子どもたちが多く、レッスン内容も柔軟に取り入れることが特徴で、そのようなピアノの教本も多く存在します。


このスタイルの一番の魅力は、子ども自身が興味を持った曲を学ぶことで、自然とモチベーションが高まり、楽しみながらピアノに取り組めることです。しかし選曲の自由度が高い分、先生や保護者の方が「好きな曲ばかりになってしまわないかな?」「基礎もしっかり身につくかな?」と心配になることもあるように感じます。


「特定の指導法がないことが、指導法そのもの」と言われることもあり、アメリカではピアノ指導者の知識や経験がより求められる場面も多いのが特徴です。子育てはその子に合った方法を見つけ、柔軟に対応していくことが大切です。


日本とアメリカ、それぞれの音楽教育には良さがあり、どちらが正解というわけではありません。だからこそ、子どもたちの成長に合わせて、いろいろな方法を取り入れることで、より楽しく、充実した音楽体験につながるかもしれませんね。


それでは、ここから少し学校生活や目標設定についてお話ししたいと思います。


アメリカでは、学校の音楽プログラムが充実しており、吹奏楽(Marching Band)、オーケストラ、合唱団といった活動が一般的で、実践的な授業を通じて幼少期から楽器に触れる機会が豊富にあります。さらに、音楽活動は大学入試の評価対象にもなるため、課外活動として積極的に参加する子どもが多く、「自分で考えて決める力」を養う場にもなっています。


また、音楽が学業の一環として評価されることもあるため、子どもにどこまで音楽を続けさせるかの判断が親に委ねられる場面が多いのも特徴です。


音楽の持つ価値をどう活かすかは、それぞれの環境によって違いますが、子どもたちが自分の可能性を広げられるような選択肢を持てる環境があることは、アメリカの教育文化の特徴のひとつかもしれません。


そしてアメリカでは、レッスンの延長線上に目標や演奏の機会が設けられていることが多く、音楽の試験やコンクールが生徒たちの大きな目標になっています。


例えば、米国ギルド・ピアノ検定試験は、全米を中心に毎年850の開催地で夏頃に実施され、一年間の学びの成果を披露する場となっています。


米国ギルド・ピアノ検定試験が「試験」と呼ばれる理由のひとつは、明確な採点基準が整っていることです。そのため、生徒たちは自分の演奏がどのように評価されるのかを具体的に知ることができ、成長の指標にもなります。さらに、ギルド試験は他者と競うものではなく、自分自身の成長を見つけることができる場でもあるため、一人ひとりの努力や進歩がしっかりと評価されるのが特徴です。


また、MTNAコンペティション(全米音楽教師協会主催)は、全米規模のコンクールで、子どもたちが自分の演奏を発表し、実力を試すチャンスとなっています。


このように、アメリカでは試験やコンクールに向けて練習を重ねることで、自然と目標を持ち、音楽に前向きに取り組む習慣が身についていきます。こうした習慣は、1年間の学びの中で自然に組み込まれていくのが特徴です。また、長い夏休みには、違ったことをしてリフレッシュしたり、専門分野をさらに深めたりすることができます。オンとオフのメリハリをつけた学び方でもあります。


最後に、アメリカでは、音楽は単なる趣味ではなく、進学やキャリア形成に直結する分野としても活用されており、音楽大学への進学(ジュリアード、バークリーなど)だけでなく、一般大学での音楽副専攻(Music Minor)や、奨学金を得るための音楽活動など、音楽を学ぶことが将来の選択肢を広げる大切な要素となっています。


一方、日本では、「音楽はプロを目指す人が学ぶもの」というイメージが強いように感じられ(?日本で指導に携わっていてそのような印象を受けます)、一般の大学で音楽を専門的に学ぶ機会はあまり多くないように思います。


アメリカの音楽教育は、日本とは異なる点が多いものの、その中には日本の保護者や先生にとって新たな選択肢となるものもあり、生徒の自主性を尊重する教育、多様なスタイルのピアノ指導、試験や課外活動の活用、そして音楽をキャリアにつなげる仕組みなど、音楽教育の幅を広げるさまざまな特徴があります。


こうした違いを知ることで、子どもたちの音楽教育に新たな可能性を見出し、それぞれの環境に合った学び方を取り入れるきっかけになれば嬉しいです。


 
 
 

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