音の魔法使いたちへ 〜ハロウィンがくれる創造の時間〜
- ACM日本支部

- 10月31日
- 読了時間: 4分

ご無沙汰しております。米国ピアノ指導者団体ACM日本支部です。
さて今日は10月31日。日本でもハロウィンがすっかり浸透してきましたね。街中ではオレンジと黒の装飾が目を引き、子どもたちが思い思いの仮装をして歩く姿があちこちで見られるようになりました。
このハロウィンの精神は、ピアノ教育においてもとても豊かなインスピレーションを与えてくれます。それは「自由な表現」と「創造的な挑戦」の象徴だといえるのではないでしょうか。
もともとハロウィンは、古代ケルトの収穫祭「サウィン(Samhain)」が始まりといわれています。この日は一年の終わりにあたるとされ、人々は火を灯し、仮装をして、あの世からやってくる霊や精霊を迎えたと伝えられています。のちにキリスト教の「万聖節(All Saints’ Day)」の前夜として「All Hallows’ Eve(ハロウズ・イブ)」と呼ばれるようになり、そこから「ハロウィン」という言葉が生まれました。こうして長い歴史を経て、世界中で親しまれるお祭りになったという言い伝えが:)
さて、日本に目を向けると日本の夏には「怖い話」や「妖怪の話」で涼をとる文化があります。興味深い事に夏の妖怪話の時期に「この物語に合う曲は何かな?」などを子どもたちに尋ねても、あまり強い反応が返ってこないことがあります。ところが、ハロウィンの季節になるとどうでしょう。「怖い音」や「不思議な響き」をテーマにすると、子どもたちは不思議と自然にその世界へ惹かれていきます。このような子どもたちの反応の違いを、きっと多くのピアノ指導者の方もレッスンの中で感じておられるのではないでしょうか。
日本のハロウィンの曲・・・正直すぐに思い出せませんが、日本では、「おばけなんてないさ」(作詞:まど・みちお)という童謡が長く親しまれています。さらに、「ゲゲゲの鬼太郎」のテーマ曲も、日本を代表する“おばけ音楽”のひとつといえるでしょう。独特の短調旋律とリズム感があり、和の妖怪文化を感じさせながらも、子どもたちにとって親しみやすい楽曲です。例えばこうした曲をハロウィンの時期に取り入れると、生徒たちは音の中に“怖さとユーモア”を見つける楽しさを自然に学ぶことができます。
不協和音を使っておばけの声を作ったり(CとD♭を同時に弾くなど)、短調のスケールで“魔女のテーマ”を作曲したり、ペダルを使って遠くの風や霧の音を表現したりすると、子どもたちは音で世界を描く楽しさに気づきます。こうしたチャレンジは音そのものの表情を感じ取り、自由に音楽を創る感性を育てる大切な機会となったりしますね。
そして多くのACM米国公認指導者は、演奏技術の習得と同じくらい「創造性の育成」を大切にしています。「自分の音楽を創り出す力」が重視している先生も多くいらっしゃいます。
特にハロウィンのような行事をテーマにすると、生徒たちは自然に即興演奏や作曲に挑戦できるようになります。その雰囲気をごく自然に作り出せるのも、この季節ならではの良いところです。
例えば小さな子どもが五音音階でハロウィンのメロディを即興で弾いたり、中高生がコード進行を使って短調の“Trick or Treat”テーマを作ったりする中で、音楽が「与えられるもの」から「創り出すもの」へと変わっていきます。
大切な事はハロウィンの音楽は“怖いだけのもの”ではありません。そこには「怖さ」の中に潜む美しさやユーモアもあります。サン=サーンスの《死の舞踏(Danse Macabre)》のように、死やおばけを題材にしながらもユーモラスでリズミカルな曲調は、“怖さの中の楽しさ”を象徴しています。恐怖と遊び心が絶妙に共存しており、聴く人に想像力をかき立てる魔法のような魅力があります。
こうした作品を通して「音のストーリーを読み取る練習」を行うことで、感情表現の深みを養い、音楽的理解をより豊かに広げることができます。
ハロウィンのレッスンは、単なる季節のイベントではありません。それは「音で物語を語る練習」であり、「音楽的想像力を解き放つ瞬間」でもあります。
ACM米国公認指導者として、生徒一人ひとりが“音の魔法使い”になれるようなレッスンを提供することこそ、教育者としての大きな喜びです。
ハロウィンの前に書けばよかったなと思いながら、今まさにこの原稿をハロウィン当日に書いています。
みなさんもどうぞ素敵なハロウィンの1日をお過ごしください!
米国ピアノ指導者団体
ACM日本支部



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